(1)養育費の意味

養育費とは、未成熟子が社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。根拠規定としては、婚姻期間中にあたっては婚姻費用分担及び夫婦間の扶助義務を、離婚後にあっては監護費用をあげることができます。

(2)養育費に含まれる費用

養育費には、未成熟子の衣食住のための費用や健康保持のための医療費など生存に不可欠な費用のほか、未成熟子がその家庭の生活レベルに相応した自立した社会人として成長するために必要な費用なども含まれます。
養育費には、学校等の授業料、教材費、クラブ活動費、進学のための予備校の費用、塾の費用、家庭教師代、受験料などが含まれます。

(3)養育費の始期と終期

養育費の支払義務の始期については、実務上、直接請求時あるいは調停等の申立て時から支払義務が認められることが多いです。
終期については、一般には未成熟子が成人に達したときとする扱いが多いです。しかし、大学や専門学校に進学した場合にはその卒業する月までと定めることがあります。

(4)養育費の算定方法

養育費の分担については、養育費・婚姻費用算定表を参考にして算出されます。算定表においては、子を監護してない親を「義務者」、子を監護している親を「権利者」としています。
具体的な養育費の算定にあたっては、単に算定表に依拠するのではなく、個別具体的な事情を考慮してなされます。
義務者の現在の履行能力だけでなく、将来ある程度予測が可能な事項も含めて検討し、支払の確実性が低い場合には、一括払いをさせるなど、履行が確実にされるような工夫が必要です。

(5)養育費の請求方法

ア 養育費の支払いについて合意がある場合には、当該合意に基づいて任意の履行を期待することになりますが、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、不履行が生じた場合には、あらためて債務名義を取得することなく強制執行を行うことが可能となります。
公正証書を作成していない場合には、民事訴訟手続きをとることになります。

イ 離婚について合意に至らない場合、又は、離婚については合意に至っているものの、養育費の支払いについて合意に至らないために離婚が成立しない場合には、離婚についての調停手続き、人事訴訟手続きの中で、養育費の支払を求めていくことになります。

ウ 離婚が成立したものの,養育費についての合意がなされていない場合には、当事者の話合いによる解決を試みることになりますが、これが困難である場合には、調停の申し立てをすることとなります。
調停が成立しない場合、裁判所は調停に代わる審判をすることができます。

エ 養育費の請求は、子を監護する親の一方及び未成熟子が行うことができます。未成熟子が請求する場合は、法的代理人が申し立てを行う必要があります。

(6)養育費の履行確保

養育費が支払われない場合の履行確保手段としては、履行勧告、履行命令及び強制執行手続があります。

ア 履行勧告
履行勧告とは、調停や審判で定められた義務の履行を怠る義務者に対して、家庭裁判所が、権利者の申し立てにより、義務を履行するように勧告をする制度です。
勧告に従わない場合も、罰則等は定められておらず、履行勧告は心理的な効果を生じさせるにとどまります。
とはいえ、ご自身で請求をするよりも、裁判所の名前で請求される方が支払われる可能性は高くなるため、一定の効果が期待されます。

イ 履行命令
履行命令とは、家庭裁判所が、権利者の申し立てにより、義務者に対して、相当の期限を定めてその義務の履行をなすべきことを命じる制度です。
履行命令に違反した場合、10万円以下の罰金が科されることがあります。

ウ 強制執行手続き
強制執行手続きを行うためには、調停調書、審判、判決などの債務名義が必要となります。もっとも,執行認諾文言付きの公正証書を作成していた場合には、それを使っての強制執行手続きが可能となります。

(7)養育費の支払方法

養育費は、月払いが原則となります(定期金支払)。
もっとも,当事者間で合意ができる場合には、一括で支払ってもらうことも可能です。
定期金による養育費は、長期かつ継続的に履行される性質のものであるため、支払いや受取りが確実な金融機関による振込みの方法が利用さることが多いです。

(8)養育費の増額調停・減額調停

一度養育費の金額に合意をしたとしても、合意がなされた当時予想できなかった事情が生じた場合には、養育費の額について変更することができます。
合意がなされた当時予測できなった事情のとしては①父母の収入の増減,②父母が病気またはケガによる収入の減少,③父母が再婚や養子縁組を行った場合等が考えられます。
昨今コロナウイルスの影響により収入の減少や仕事を転職される方が多く、養育費の額を改めて定める方が増加しております。
なお、平成30年12月より養育費の算定表は金額を改められており、それ以前に養育費を定めた方に関しましては、経済状況にもよりますが、増額調停により養育費が増額する可能性が大いにあります。

(9)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所の解決事例

1 養育費が一切支払われていない事案において、調停の申し立てを行ったことで適切な金額の養育費が支払われるようになった事案
2 離婚後、妻がほかの男性と再婚し、養子縁組がなされたため、養育費の減額を求め、支払い義務を免れた事例

(10)よくある相談例

1 養育費を請求したいが、どうしたらよいか。
2 コロナウイルスの影響により収入が大きく減少したため、養育費の額を変更したい。
3 離婚の際、公正証書で養育費額を定めたが、相手方が支払ってこない。どうしたらよいか。

(11)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの取り組み

離婚の際、養育費を定めずに離婚を行う夫婦が多く、また、定めたとしても養育費を実際に支払っていないケースが多くあります。
しかし、養育費は、子どもが成長する上で必要な金銭であり、子どもの健全な育成を図るべく、欠かせないものです。
当長崎オフィスでは、養育費の定めがなされていない方、養育費を定めたが実際に支払いを受けていない方が適正な養育費の支払いを受けられるよう、ご相談者様と一緒に方法を検討してまいります。
他方で、コロナウイルスの影響により、養育費の支払いを維持したくてもできない状況になっている方も増加しております。このような世界の経済状況においても子どもの健全な育成のために,最低限支払いが継続できるような養育費の額の調整を図ることが必要になっております。
当長崎オフィスでは、養育費に関するご相談はどのようなご相談でもお受けしておりますので、養育費に関する問題でお悩みの方は当長崎オフィスまでお気軽にご連絡ください。