(1)DVの意味

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは,「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。ただ、これは広い意味での暴力であり、保護命令の根拠となるDV防止法 (配偶者からの暴力防止及び被害者の保護等に関する法律)では、もう少し狭く捉えられており、DVについて、「配偶者からの暴力」とは,配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と定められています。
「配偶者」には、事実婚の者、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力も含まれます。DVにおける「暴力」は,身体的暴力のみならず,心理的暴力,性的暴力を含みます。
なお、DV防止法では、暴力を受ける対象を女性に限定していないため、男性が被害者のDVも想定されます。

DVにあたる行為例

身体的暴力→殴る,蹴る,押す,物を投げる,髪の毛を引っ張る,包丁を突きつける等
性的暴力→セックスの強要,嫌がっているのにキスをする,サド・マゾの強要,妊娠・中絶を強要する,避妊に協力しない等
精神的暴力→「バカ,アホ,能無し」「誰に飯を食わせてもらっていると思っているんだ」などと言う,大声で怒鳴る,無視をする,物を壊す,子どもや親兄 弟に危害を加えると言って脅す等
社会的暴力→家族や友人との交際を制限する,電話や手紙を細かくチェックする,仕事を辞めさせる等
経済的暴力→生活費を渡さない等

(2)DV対策

①警察の援助

DV対策として,警察本部長等による援助を求めることができます。警察官は,通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときは,法令の定めるところにより,暴力の制止,被害者の保護その他の被害の発生を防止するための措置を講ずるよう努めなければなりません(DV法8条の2)。
具体的な措置としては,①被害者の状況に応じて避難その他の措置を教示すること,②被害者の住所又は居住を知られないようにすること,③被害防止交渉に関する助言,④110番緊急通報登録システムへの登録等があります。

②相談・避難

DV対策として、配偶者暴力相談センター,NPO等への相談もできます。
また、市区町村の福祉士事務所から、民間シェルターを紹介されることもあります。福祉士事務所や民間シェルターでは、生活保護、児童扶養手当受給、就労支援などの相談も行われています。

③保護命令

DV対策として,裁判所による保護命令があります。
保護命令とは,被害者の生命又は身体に危害を加えられることを防ぐため,裁判所が,被害者の申立てにより,身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を行った配偶者に対し,一定期間,被害者又は被害者の子や親族等へのつきまとい等の禁止や,被害者とともに生活の本地としている住居からの退去等を命じる裁判です。
保護命令の内容としては,①被害者への接近禁止命令,②被害者の同居の子への接近禁止命令,③被害者の親族等への接近禁止命令,④退去命令,⑤電話等禁止命令等があります。
保護命令に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(DV防止法29条)。
保護命令の申し立てを行うことで、最低限の生活の安定を確保できるため、DVに悩まれたらまずは保護命令の申し立てを行い、今後のことをじっくり考えていくことが望ましいです。

④告訴

DVの行為態様は,刑法上の暴行罪,傷害罪,脅迫罪,強制わいせつ罪,殺人罪,などの犯罪となるものがあります。
DVにより怪我をした場合などには,警察署の刑事課に診断書等を持参の上,被害届の提出や,刑事告訴することができます。
深刻なDVは、犯罪行為になっていることが多々あります。DVに悩まれたら勇気をもって、警察や周囲の方、弁護士に相談しましょう。

(3)DVと離婚

配偶者からの暴力・虐待行為は、離婚事由としての「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当すると判断されることが多いです。この事由にあたるかどうかの判断は、不貞、ギャンブル、飲酒癖、暴言、侮辱などその他の事情を考慮してなされます。暴力により怪我をした場合は、診断書や写真などを証拠として確保しておくことが有効です。
また、配偶者からのDVは、離婚に伴う慰謝料において考慮される事情にもなります。

(4)モラルハラスメント

昨今、モラルハラスメント(精神的なDV)に関する相談が増加しております。モラルハラスメントは日常的に行われることが多く、常態化しているため、モラルハラスメントの被害に受けていることを気づかない方が多くいます。また、モラルハラスメントの被害にあっていることを気づいても、口頭で日常的に言われているため、証拠がないことが多く、立証が困難なケースが多いです。
そのため、モラルハラスメントの被害にあっているかもと思われる方は、証拠をしっかり確保することが重要です。
日々の言動を日記に残したり、録音をとるなどが重要です。
当事務所では、モラルハラスメントでお悩みの方のご相談を日常的にお受けしております。
自分が被害にあっているかも、モラルハラスメントを自分がしているかもと感じている方は、まずはご相談下さい。
早い段階でご相談いただけることで証拠の準備の仕方なども含め、幅広くモラルハラスメントについての解決方法を検討できます。
なお、モラルハラスメントは、女性だけが被害者となるわけではありません。男性の方が被害にあっていることもあり、そのようなご相談も多く寄せられております。

(5)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所の解決事例

1 離婚を強く拒絶している相手方に対し、モラルハラスメントの証拠をもって調停に望み、離婚を認めさせた事例
2 モラルハラスメントを否定している相手方に対し、モラルハラスメントの証拠を提示して話し合いを行い、解決金として金100万円にて離婚した事例

(6)よくある相談例

Q 暴力を受けて、我慢していましたが、限界です。離婚したいです。
Q 別居したいと思っていますが、追いかけくるかもしれず、不安です。保護命令の申立てをしたいです。
Q DVを理由に離婚したいですが、どのような手続きをとるのがよいですか? 
Q 夫から毎日馬鹿にされます。これはモラルハラスメントにあたりますか?
Q モラルハラスメントを理由に離婚したいですが、どのように進めてい くべきですか。
Q モラルハラスメントを理由に慰謝料を請求したいです。

(7)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの取り組み

弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスでは、DV問題について多数のご相談をお受けしております。
DVは、本人がDVの被害にあっていることに気づいていない場合が多数あります。普段はとても優しく、お酒を飲むと暴れたり暴言を吐かれたりするが、その後非常に優しくなる方等、日常的な暴力や暴言ではないようなケースでは、一時的なものだから仕方ないと思われたり、また、子どものために我慢しなければ思う方や暴力を振るわれるのは自分に落ち度があるからだと思い込み、相談などに行けない方などが非常に多いです。
しかし、暴力や暴言はどのような理由があっても許されるわけではありません。
DVの問題は、深刻な問題です。一人で悩まずにまずは当事務所長崎オフィスまでお電話ください。
あなた自身やあなたの家族を守るべく、適切なアドバイスを致します。