(1)婚姻費用分担請求の意味

ア 夫婦には同居義務と相互扶助義務があり、自分の生活と同程度の生活を家族にも保持させる義務(生活保持義務)を負います。そのため、夫婦が婚姻生活を維持するために要する費用(婚姻費用)は、夫婦が相互に分担することになります。この義務は、別居していても変わらないため、別居中であっても婚姻費用分担請求はできます。

イ 婚姻費用は、通常は基礎収入の多い者(義務者)が、基礎収入の少ない者(権利者)に対して支払うこととなりますが、お子さまがいて、基礎収入の多い方が子どもの面倒を見ているような場合には、基礎収入の少ない方が婚姻費用の支払い義務を負います。婚姻費用は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮してその額を決めます。

婚姻費用の具体的内容

①衣食住の費用
②医療費
③娯楽費
④交際費
⑤老後や将来のための費用
⑥未成熟の子の養育費及び教育費等 です。

ウ 婚姻費用の分担は、夫婦の協議で決めるのが一般的です。
しかし、協議ができないような場合には、家庭裁判所での調停や審判を通して決めることとなります。

エ 婚姻費用は、別居した場合に、常にもらえるわけではありません。
婚姻費用分担請求をする側に明らかな有責性(不貞行為等)がある場合等については、婚姻費用の分担を認めないことがあります。
但し、この場合であっても、養育費相当額については、支払い義務を免れるものではなく、あくまでも有責性を有する者の生活費相当額についての支払いが拒絶できるのみです。

(2)婚姻費用分担額の算定

婚姻費用額は、双方の資産,収入,支出,子の有無,子の年齢などを考慮して算定されます。
婚姻費用についても、養育費と同じように、裁判所が算定表を公表しています。
現在実務では、この算定表が基準となって婚姻費用の金額が決まっています。
また算定表は、あくまでも通例のケースをもとにしており、例えば、二人の子どもがおり、子どもを各親が一人ずつ養育看護しているような場合については、婚姻費用の算定式に基づいて計算を行い、適正な婚姻費用の額を計算します。

(3)履行の確保

ア 強制執行

調停により、権利者が義務者に対して婚姻費用として一定額の金銭を支払う合意が成立したのに、義務者がその支払をしない場合は、権利者は申立てにより強制執行(給料や預金債権の差し押さえ等)をすることができます。
また、一定期間内に履行しなければ、一定の金銭を債権者に支払うことを命じて、債務者に心理的強制を加えるという間接強制をとることもできます。

イ 履行勧告

調停により、権利者が義務者に対して婚姻費用として一定額の金銭を支払う合意が成立したのに、義務者がその支払をしない場合は、権利者は、家庭裁判所に、義務者に対して調停で定められた義務を履行するような勧告を申し出ることができます。
この申出は、口頭や電話でもでき、費用もかかりません。

ウ 履行命令

調停により、権利者が義務者に対して婚姻費用として一定額の金銭を支払う合意が成立したのに、義務者がその支払をしない場合は、権利者は、家庭裁判所に、義務者に対し履行命令を申し立てることができます。履行命令が出されると、正当な理由なく履行命令に従わない義務者には、10万円以下の罰金が科されることがあります。

(4)婚姻費用分担額の変更

婚姻費用の分担額が定められた後に、退職、病気等による生活状況の変化や社会情勢の変化により、審判・調停で決められた額が不公平になる場合があります。この場合、当事者は、家庭裁判所に対し、前の審判・調停の変更を申し立てることができます。

(5)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所の解決事例

1 別居後、生活費を一切入れてくれない夫に対し、婚姻費用の調停を申し立て、適正な婚姻費用をもらえるようになった事例。
2 浮気をして、子どもを連れて出て行ったにもかかわらず、婚姻費用の分担調停を申し立ててきた事案において、婚姻費用の支払い義務がなく、あくまでも養育費相当額の支払いのみが認められた事例。
3 妻が浮気しており、子供の父親が夫の子ではない可能性が高いケースにおいて、妻側がDNA関係を拒絶し続けたため、夫と子供の父子関係は残っていましたが、DNA鑑定を拒絶し続けたことが不当であることが考慮され、権利の濫用として婚姻費用分担請求(子の養育費相当分を除く)を認めなかった事例。
4 原審の審判では、残業代が昨年度と比べて大幅に減っている事実を認めませんでしたが、抗告審において、今年度には大幅な残業代の減少があることを考慮し、原審の婚姻費用の金額を変更した事例。

(6)よくある相談例

1 夫が生活費をいれてくれない。どうしたらよいか?
2 婚姻費用の算定表の見方がわからない、教えてほしい。
3 婚姻費用を支払いたくない。どうしたらよいか?
等、婚姻費用の支払いに関するご相談を多数お受けしております。

(7)弁護士法人山本・坪井綜合法律事務所長崎オフィスの取り組み

当事務所長崎オフィスでは、婚姻費用に関するご相談を多数お受けしております。
現在、裁判実務としては、婚姻費用の申し立てを行った月から婚姻費用の支払い義務を認める傾向にあります。そのため、申し立てが遅れるとその分生活費をもらえないこととなり、当事者にとって大きな不利益になります。
したがって,相手方が生活費を支払わない状況になった場合には、速やかに調停の手続きの申し立てを行うことが重要です。
相手方が生活費を一切入れてくれないような場合や,有責性を有する相手方からの婚姻費用の請求についてお悩みの方など、婚姻費用に関するお悩みをお持ちの方はまずは当長崎オフィスまでご連絡ください。